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水道水に含まれるトリハロメタンとは?有害性や加熱時の注意点などを解説

2020/03/12

「トリハロメタンとは、一体どんな物質なのだろう?」 「水道水に含まれるトリハロメタンには、どんな有害性があるのだろう?」 こんな疑問を抱える方のために、この記事では水道水におけるトリハロメタンの定義や有害性などについて詳しく解説していきます。水道水の安全性が気になる方はぜひご確認ください。

水道水に含まれるトリハロメタンとは?

トリハロメタンとは、メタン(CH4)における4つの水素のうち、3つが臭素(Br)や塩素(Cl) に置き換えられた化合物のことです。

水道水に含まれるトリハロメタンは、浄水場や下水処理場の消毒で使われる塩素と、水中に存在するフミン質などの有機化合物の反応で生成されます。このように消毒によって生成される副産物のことを、消毒副生成物と呼びます。

◇ 総トリハロメタンとは?

日本の水道水質基準 では、以下の4物質を総称して「総トリハロメタン」と定義しています。

  • クロロホルム(CHCl3)
  • ブロモジクロロメタン(CHBrCl2)
  • ジブロモクロロメタン(CHBr2Cl)
  • ブロモホルム(CHBr3)

トリハロメタンのなかで最も存在比率が高いのは、クロロホルム(トリクロロメタン)です。

◇ 「総トリハロメタン」と「トリハロメタン」は同じ化合物?

日本の水道水質基準で定められた「総トリハロメタン」は法律上の検査項目の名前であり、クロロホルムを中心とする先述の4物質のみを指す言葉です。

一方「トリハロメタン」は、メタン(CH4)の4つの水素のうち3つ がハロゲン(ヨウ素・臭素・塩素・フッ素)に置き換えられた化合物の総称です。

総トリハロメタンは、トリハロメタンの一部とイメージするとわかりやすいかと思います。

この記事では、水道水におけるトリハロメタンが主なテーマとなりますので、以降、総トリハロメタンを「トリハロメタン」と統一して解説をしていきます。

◇ 日本におけるトリハロメタンの基準値

日本の水道法では、水道水における安全性を維持するために、トリハロメタンに関しては以下のような厳しい基準値を定めています。

  • 総トリハロメタン:0.1 mg/L
  • クロロホルム:0.06 mg/L
  • ブロモホルム:0.09 mg/L
  • ジブロモクロロメタン:0.1 mg/L
  • ブロモジクロロメタン:0.03 mg/L

トリハロメタンに含まれるクロロホルムの特徴

トリハロメタンのなかで最も存在比率が高い物質はクロロホルムです。ここでは、クロロホルムの特徴を例に挙げながら、トリハロメタンの有害性を解説していきます。

◇ クロロホルムの有害性【発がんリスクあり】

クロロホルムは、かつて世界中で麻酔薬として使われていた物質です。しかし、肝障害や腎障害、不整脈といった副作用が見られたことから、今では使われていません。

国際がん研究機関であるIARC(International Agencyfor Research on Cancer)による人に対する発がん性の分類では、クロロホルムを2B に指定しています。

ちなみに、IARCの発がん性分類は以下の5段階です。

  1. グループ1:ヒトに対する発がん性がある
  2. グループ2A:ヒトに対しておそらく発がん性がある
  3. グループ2B:ヒトに対して発がん性がある可能性がある
  4. グループ3:ヒトに対する発がん性について分類できない
  5. グループ4:ヒトに対する発がん性がない

出典:国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について:農林水産省

2Bは、5段階あるこの分類において、ちょうど真ん中の位置づけです。全部で299物質が指定されている2Bは、「人に対する発がん性の可能性があること」を意味しています。
そして、同じくトリハロメタンに含まれるプロモジクロロメタンも、2Bの指定物質となります。

◇ クロロホルムの含まれた水道水を飲み続けて大丈夫?

クロロホルムの有害性などを危険視する日本では、WHOなどと比べても厳しい水質基準を定めています。

  • 日本のクロロホルムにおける水質基準:0.06mg/L以下
  • WHOの飲料水水質ガイドライン:0.3mg/L以下

0.1mg/L以下となる総トリハロメタンについては、USEPAやカナダ、EUとほぼ同じです。 しかし、トリハロメタンのなかでも特に存在比率の高いクロロホルムにこれだけ厳しい基準を設定しているということは、日本の水道水は海外と比べて安全性は非常に高いといえます

◇ 水道水のクロロホルムは体内に蓄積される?

口からの摂取や吸入で速やかに吸収されたクロロホルムは、薬物代謝酵素によって代謝され、二酸化炭素として呼気中に排出されます。水道水に含まれる微量のクロロホルムが体内に蓄積されることはないと考えられます。

水道水の煮沸でトリハロメタンが増えるって本当?

インターネット上で水の安全性について調べていると、「水道水の煮沸によってトリハロメタンが増える」といった記事を見かけることが多いと思います。では、自宅でやかんなどを使って水道水を沸騰させた場合、本当にトリハロメタンは増えてしまうのでしょうか?

◇ 短時間の加熱で増加するトリハロメタン

トリハロメタンは、加熱による水温上昇で増加する物質です。こうしたことが起こる背景には、水の温度が上がることによって生じる残留塩素と前駆有機物の反応が大きく関係しています。ある研究結果では、沸騰直前のトリハロメタンが加熱前の1.0~3.6倍になったという報告もあります。

さまざまな物質によって構成されるトリハロメタンの場合、各物質の割合によっても増加量は変わってきます。ですが、主な増加原因は最も存在比率の高いクロロホルムにあることから、一般的にも煮沸によって有害性が高まると考えられているのです。

◇ トリハロメタンの濃度上昇が少ない高度浄水処理

トリハロメタンなどの消毒副生成物への高い効果で注目されているのが、近年多くの自治体で導入されている高度浄水処理という技術です。高度浄水処理におけるトリハロメタンの成分には、クロロホルムが最も高い割合を占める従来の処理水と違って、臭素化トリハロメタンが占める割合が高くなっています。
この方法で浄水された水道水の場合、沸騰直前に起こるトリハロメタンの急激な濃度上昇が見られなかったという研究結果もあります。またこのケースでは、加熱にともなってトリハロメタンが減少し、煮沸から1分で消滅したというデータもあるのです。

◇ トリハロメタンを除去したいなら長時間の煮沸が理想

自宅の水道水が従来の処理方法だった場合も、長時間の煮沸でトリハロメタンは減らせます。これは、煮沸によって水道水中のトリハロメタンが揮発するからです。

実際におこなわれた研究では、5~30分程度の煮沸で、水中から完全にトリハロメタンが除去できるとしています。ちなみに多くの自治体では10分以上の沸騰を推奨しており、研究結果と合わせて考えると10~30分ほどの加熱が理想的です。

水道水の煮沸についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
関連記事:水道水は沸騰させて残留塩素抜きを行うと安全に飲める!煮沸の方法や注意点

◇ 電気ポットでもトリハロメタンは除去できる?

電気ポットを使うときには、沸騰操作を数回繰り返すことでトリハロメタンを除去できます。ある実験では、電気ポットを使ったときの沸騰までのトリハロメタン量は、やかんによる沸騰と同じであることがわかっています。

ただし沸騰と比べてマイルドな加熱になる保温の場合、揮発できなかったトリハロメタンが数時間存在し続けますので、電気ポットの使用時は注意をしてください。

まとめ

日本の水質基準で定められたトリハロメタンは、浄水場や下水処理場で塩素消毒したときにできる、消毒副生成物です。

トリハロメタンのなかで最も存在比率の高いクロロホルムだけに目を向けても、この物質には癌や肝障害などのリスクがあることがわかります。そのため日本国内では、海外よりも厳しい「クロロホルム:0.06mg/L以下」という基準で水道水を管理しているのです。

そんなトリハロメタンには、短時間の加熱で増加し、長時間の煮沸で減少する特徴があります。ただしなかには、高度浄水処理という技術で浄化された水道水のように、沸騰直前にも急激な濃度上昇が起こらず、短時間で消滅するものもあるようです。

トリハロメタンの除去目的で水道水を煮沸するときには、10~30分加熱すると安全です。ぜひ自宅でも実践してみてください。

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